はじめまして。義肢装具士のフクです。
今回は、お仕事の中でよく義足ユーザーの方から寄せられる質問の一つであり、義肢装具士としてこれはもったいないとよく感じるテーマについてまとめてみました。
これを基準にすることで今までの悩みの一つも解決するかも?
今回のテーマは
「義足と相性の良い靴を選ぶ5つのポイント」
さて、それぞれのポイントで、いったいどんな違いが現れるのでしょうか!
◆靴選びの5つのポイント
・靴の中の傾斜
・靴の開き
・インソールの形
・固定の方法
・重さ
靴選びの5つのポイント
靴の中の傾斜
まず選ぶべきポイントは、「差高がない(少ない)靴」です。靴には「差高」があらかじめ設定されています。
差高とは、ボールラインの高さと踵の高さの差のことです。
スニーカーだと、1~1.5cmあたりが多いかと思います。
健常の足では、このようなスニーカーを履くと足首の角度が床面に対してつま先が下に向く形になります。
また、義足ではこれら差高が設定されている靴を履くと、「履いている状態」と「脱いでいる状態」では義足のアライメント状態が乱れてしまいます。
義足のアライメントとは、義足のフィッテイングを行ううえで最も重要な要素の一つで、また、義足のパーツ間の角度設定がこのフィッテイングを行ううえで重要な要素となります。(義足のアライメント詳細についてはここでは、深くは触れません)
義足の標準アライメント(出典:「義肢制作マニュアル」義肢装具士協会)
乱れたアライメントで義足を使用すると、歩行に支障をきたすだけでなく、「断端の傷」や「転びやすくなる」などのトラブルの原因となってしまいます。
極力、差高がない(少ない)靴を使用することで、靴の有無に関係なく病院で義肢装具士さんに設定してもらった適切なアライメントを保つことができます。
インソールの形
こちらも義足のアライメントに関するポイントになります。
理想は「インソールが平らな靴」を選ぶことです。
スポーツタイプの靴ではよくインソールにアーチ形状が施されているモデルを見かけます。
アーチ形状のついた靴を使用すると、足の裏で傾斜がついてしまい、義足のアライメントが乱れてしまいます。
それによって、「断端の傷」や「歩き辛さ」といったトラブルにつながってしまいます。
購入の際に、インソールを取り出してみてアーチ形状が足の裏に干渉していないか確認してみてください。
靴の開き
こちらは義足では靴の脱着が「意外と面倒」というのがポイントです。
義足の足部(足関節より下)はかたく、つま先が曲がったりしないので、下図のような「開きの大きい靴」を選ぶと脱着が楽になります。
履き口が狭かったりあまり開きがない靴を選んでしまうと、脱着の際に踵の芯を踏んづけたりそもそも靴の中に入らない恐れがあります。
出典: コンバース ALL STAR LIGHT BIGBELT
固定の方法
義足を使用する際は「しっかりと固定できる靴」を使用しましょう。
義足は感覚がないので、もし靴が脱げかけてしまったときに気が付かないと、そのまま歩いてしまい転倒してしまう恐れがあります。
スリッポンやサンダルは避け、紐やベルトで踵と足の甲がしっかり固定できるものを選択しましょう。
重さ
最後に歩きやすさに関してのポイントです。
靴は義足の一番先につけるもので重さが一番反映されやすい部分とも言えます。
こちらは、個人で歩きやすい重さの感覚が分かれるので、実際に店舗で試着し確認したり、担当の義肢装具士さんに相談してみると良いでしょう。
まとめ
今回の靴を選ぶポイントをまとめると、以下となります。
・「差高がない(少ない)靴」
・「インソールが平らな靴」
・「開きの大きい靴」
・「しっかりと固定できる靴」
・「自分に適切な重さの靴」
義足と靴の相性はかなり重要で、この記事をご覧になった皆さんにはこれらのポイントをしっかり押さえて靴選びをしていただければと思います。しかし、どうしても履きたい靴がある!といった方もいらっしゃると思います。
そんなときは、ぜひ担当の義肢装具士さんへご相談いただければと思います。
義足を製作する上で靴のニーズは重要な情報なので、アライメントの調整や今後のパーツ選びの参考にさせていただきます。
最後に
靴を選ぶ5つのポイント、いかがだったでしょうか。
靴を履くとなにか違うという方もこの記事で相性のいい靴に巡り会えると嬉しいです。
次回は、意外と知られていない義足ユーザーの健側の足の負担について、
靴とケアに着目してまとめてゆきたいと思います。
それでは、また!