義肢装具コラム

女性義足ユーザーの困りごと

女性義足ユーザーの困りごと

女性義足ユーザーの困りごと

こんにちは。
前回「靴と義足の微妙な関係」では「靴ができるまで」を説明しましたが、今回は女性ユーザーの困りごとNo.1、フォーマル・シーンでの靴や服装についてです。

冠婚葬祭、入学卒業などの学校行事、面接、会社の行事、表彰式、講演、、、

義足ユーザーにとって「靴選び」は非常に重要ですが、日常靴はすぐに選べるようになるでしょう。
でもその日常靴、フォーマル・シーンではふさわしいデザインではないことが多いです。
義足なのですから履ける靴で良い訳ですが、その場に相応しくないことで気が引ける女性ユーザーは多いです。

相性の良い靴はソールが決め手

義足との相性の良い靴は、ソールが決め手となります。
スニーカーを好まれる方は多いですし、推奨もされてます。
どんな方も毎日同じ靴ばかり履いていると、違うタイプの靴に慣れるのに時間がかかってしまうもの。
普段より緊張感が増すので、歩き疲れるでしょう。
カッコつけるって大変なんですよね。
それが義足ユーザーとなると、笑ってしまうほど歩けません。

義足なんですから普段と違う歩き方でも仕方がないので
すが、やはりそれを気にする女性ユーザーは多いです。

義足なんだから、義足なんだから、、、、しょうがない。
歩けるだけでも幸せなんだ。
そんなことは重々承知。

ホントのところは、
好きなモノを選べないのは辛い
欲しくないモノを買うのは嫌だ
普通のことは普通にしたい

誰もが思う単純な話なんです。
ガッカリするのは正常な反応ですよ。

お洒落には基本がある

元々海外から入ってきた洋服は、流儀もそのまま根付きました。
フォーマルウェアとは、「公式」の型があるスタイルを指します。

女性の例をあげると、スーツを着用する際、スカート丈は膝上、パンツではハイヒールを履くことになっています。
ストッキングの基本色は肌色。黒なら30デニールまでの透け感のあるものを着用。

義足ですと、こういった型に添うことが出来ません。
ルールやTPOを外すと、野暮ったい、センスがない人と判断されやすくなり、男性ならば仕事が出来ない印象を与えてしまいます。
フォーマルな場面では一層女性らしさ、男性らしさを求められますから、普段よりハードルが高いのです。

日本は決まりごとに厳しいところがありますし、事情を知らない人たちに誤解されるのはとても悲しいことです。
筆者もスーツの着こなしに問題があることで、仕事に参加出来なかったことが何度もあります。

お祝いごとでは、上品な肌の露出、光り物を身につけ、華やかさを表現します。
女性はパンツスタイルではなく、ワンピース、ドレスなどのスカートとハイヒールまたは着物を着用します。
弔事では反対に、肌を隠し、光りモノを避け、地味な服装で個性を消します。

70点は狙える

長いスカート、パンツスタイル、低い靴でも大丈夫ですから、お祝いごとの方が大変ですね。
しかし、どんなに不利な条件でも柔軟に乗り切るしかありません!

ここからは、100点満点は無理だけど、70点は狙えるポイントとオススメをお伝えします。
ズバリこれ!のような言及は致しません。
なぜなら、お洋服とのバランスで靴を選ぶでしょうし、趣味趣向で意見も分かれます。
流行により市場に出回るものはどんどん変わります。
何より、ご自身で見つける喜びを味わって頂きたいのです。

フォーマル・シーンのためのチェックポイント

1.左右の足を揃えてもらう

海外製品の足部をつけられている方が多いと思いますが、サイズ以外に、親指の張り出し具合、指の高さなど、左右の足を比べてみてください。
違いがある場合は、足部を削ってもらえるかもしれません。

義肢装具士にお願いすると、足部の耐久性が落ちないよう日本女性の足の形に近づけてくれます。
左右の足を揃えてもらうだけで、エレガントな靴を履けるようになることがよくあります。

2.理想の差高は、1cm

一般にローヒールと呼ばれるシューズの差高は、1.5~2.5cmが最も多く、これは男性靴でも同じです。
本来は足の出やすい高さですが、鉄のシャンクが入ってしまうので、我々には歩きにくいです。
ユーザーが、靴を脱いでも自然に歩ける差高の高さは1cmまで。

以下は目安になりますが、
スニーカーは1~1.5cm。
バレエシューズは 0.5cm~1cm。
フラットシューズは1~1.5cm。
を見つけられます。

5mm程高いなと感じている靴は、靴修理屋さんで削ってもらいましょう。
また、5mm程低いと感じてる靴は、中敷で調整しましょう。

3.履き口の形

履き口が広いと脱げやすくなります。
反対に狭いと履きにくいですから、靴が壊れやすくなります。
そして、履き口が広いほど華奢で女性らしく、狭いほど地味で丈夫な印象を与え、エレガントではありません。

オススメは、履き口が広めのストラップ付きです。
ストラップは足の甲、足首どちらも有効で、後から装着するストラップも便利です。(ハイヒール写真ですが、参照してください)

細いストラップほどエレガントで、太いほどカジュアルです。
これらは、ミュールバンド、シューズバンド、シューズストラップと呼ばれ、種類も豊富に売られていまので、調べてみてください。
100円SHOPの透明なシューズバンドも高評価の商品です。

 

4. ヒールと爪先の形

上のハイヒールの写真も参考にしてください。
ヒールの形も、細いほどエレガントで、太いほどカジュアルです。

写真のハイヒールをカットして、ローヒールになったところを想像してみてください。
靴が低くなるほど、太めのヒールになるのがお分かり頂けると思います。

でも印象は、ヒールの形よりも爪先の形で決まります。
丸いタイプは可愛らしく、アーモンド形(上のハイヒール)はエレガントに演出出来ますので、作りたい印象で選ぶことができます。

 

5.足部の選択

足の形は、爪先立ちした時とベタっと床についた時では形が変化しますよね?
爪先立ちは足全体が細くなり曲線的で、ハイヒールの似合いそうな形になります。

では、ベタっと床についた時はどうでしょう?
幅広、以上!のような、エレガントと程遠い形になりますよね。

義足の足部はこのベタっと床についた時の形に近いですから、たとえ差高調整付きの足部を選んでも、足の形が変わらないので違和感が残ってしまいます。

最近では、細身のタイプを選べる足部がありますので、そちらがオススメです。
ただ細身になる分、足底の面積が減少しますので、歩き心地がかなり変わります。

必ず足部のレンタルをお願いして歩行チェックをしてから決めてください。
もちろん細め方がエレガントな靴が履けます。

 

6.色

ファッションはシーズンで色が変化します。春にはパステル系や軽やかな色、夏には原色系の元気色、秋冬に落ち着いたダークカラーが増えます。
欲しい色は、季節を意識すると出会いやすくなります。

 

7.そして洋服

女性ユーザーは洋服に関しても、悩みが多いです。
女性らしい、薄く柔らかい生地を選ぶと、風が吹く度に義足の形が浮き出たり、透けて見えたりします。
普段から生地の厚みを気にされていることでしょう。

指股のついた足部を選ばれている方なら、着物という手があります。
でも、それは大変!と思われる方にオススメなのは、「リトル・ブラック・ドレス」です。

ココ・シャネルが「黒は女性の魅力を引き立たせる色」と発表した、装飾の少ない真っ黒のドレスを指します。
スカート丈は長め、真っ黒のタイツ、黒のフラットシューズで着用します。

ポイントは、安物に見えないモノ、体にフィットしたモノを選ぶことです。
アクセサリーや、ヘアスタイルで、華やかにしても良いですが、イメージして欲しいのはオードリーヘップバーンのようなシンプルな美しさです。

 

最後に

前回も書きましたが、ヒール靴は堅くて歩きにくい特徴がありますので、選んだ場合は頑張って歩きましょう。
低い革靴の場合も歩きにくいと思いますので、式場で履きかえるよう準備してください。
結婚式場なら絨毯がフカフカのところが多いので、意外と普通に歩けます。

 

 

about author
toy
・下腿義足ユーザー
・パーソナルスタイル診断士
(パーソナルカラー診断+骨格診断)
・夢みる靴職人
・先天性と後天性の障害を持ち、「義足とバレない」実
験的人生を楽しんでいます。。