義肢装具コラム

靴と義足の微妙な関係

靴と義足の微妙な関係

靴と義足の微妙な関係

こんにちは。義足ユーザーで靴職人のtoyです。
女性目線で書くコラム、参考になれば幸いです。どうぞよろしくお願い致します。

私が靴作りを始めたきっかけは、いつも靴に困っていたからでした。当時は仕事場にスニーカーで行くことはありませんでしたし、今みたいにスニーカーの種類も豊富ではなかったです。

ファッションは常に移り変わります。現在は、スニーカーの認知度も高く、どこへでもスニーカーで出かけられます。
作るのもスニーカーばかり、見た目はエレガントでも底はスニーカー素材なんてのも作ります。

 

靴ができるまで

靴は100以上の工程を経て形になります。以下の工程についてざっくりと紹介しますね。

1.採寸
2.木型
3.型紙
4.裁断
5.縫製
6.まとめ
7.釣込み
8.底付け

 

1.採寸

足の測定をします。デザインや素材についても話し合います。

2.木型

靴を作る為に必要なのが木型。 木型にパテ盛りを施すなどして、逃がしたい場所、つま先の形などを成型します。
それを元にプラ型を作成し、製作で使用します。

3.型紙

デザイン、素材を考慮し、木型に靴の絵を書き、そこから型紙を起こします。
デザインが複雑な物はパーツが増え、表革用、裏革用それぞれ作られます。

4.裁断

型紙を当て、裁断します。その後革をすいて必要な厚みに整え、パーツを組み立てます。

5.縫製

靴用ミシンで縫製されます。

6.まとめ

縫製と同時進行で行う作業です。のり付け、折り込み、芯テープなども貼られ、形を整えながら仕上げます。

7.釣込み

プラ型に添わせる工程です。靴の形になってきました。

8.底付け

ヒール靴は土踏まずに芯材を取り付け、それから底材を付けます。 圧着機にかけて接着させるセメント式、糸でかがる手縫い底など、底づけ手法も底材の種類もたくさんあります。靴の表情や歩き心地が変わります。

 

「オーダーメイド・シューズはどうだろう?」

と、考える方もいらっしゃいます。

一般的にも靴に困っている女性陣は意外に多く、外反母趾による足の変形以外にも、極端に足が大きい・小さい・左右差などで、既成靴が合わないという方がオーダーメイドで靴を作られます。

ぴったり合うとソックスのような感覚なので、ヒールの高さを感じない、疲れないなど利点がありますが、やはりお値段が張るので、一部の方のみとなり、問題を抱えた靴難民が相当数いらっしゃいます。

体重に変化が出たり、履かないと合わなくなったり、義足のソケットと同じような変化が訪れるものでもあります。

 

ぴったり感を出すのがオーダーメイドの特徴

オーダーメイドでは、ストラップやファスナー、マジックテープをつけることが可能です。
利点は、色や革・デザインが選べる、好きな差高を指定出来る、両足にぴったりの靴が出来上がることが言えますが、反面、ぴったりの靴では義足の脱ぎ履きを困難にします。
足部が変わったらどうしましょう?同じメーカーのものでも変更があるかもしれません。

「靴下の厚みはいつも同じですか?」

それらの不安を解消するには、ぴったり感を甘くする方法がありますが、価値が半減するのは残念です。
時間やお金をかけるより、既製品で出会える方がずっと楽ちんですから、オーダーメイドをオススメしていません。

 

「靴の構造」と「義足の相性」

革靴やパンプスなどのヒール靴には、爪先部とかかと部の間に隙間がありますよね?

その隙間から、絞りの効いた土踏まずの綺麗なラインが出て、美しいなと感じさせます。でも、その美しさを保持するために、既製品の靴底には鉄の芯材が入っています。
靴の返りが悪く堅く感じるのはそのためですが、芯材を取り除くと靴が壊れてしまうので、高い低いに関係なくヒール靴はいつまでたっても義足ユーザー向きになりません。

 

「スニーカーにはそんな隙間はありませんよね?」

鉄の芯材は入りません。だから足の返りも良く、足部の機能が損なわれずに歩きやすいのです。
靴底に隙間がなければ良い訳ですから、厚底でヒール風になっている靴にも入りません。

コンフォートシューズが歩きやすいのも同じ理由です。底材はウレタン系やゴム系など、ヒール靴より柔らかい素材を使うことが出来ますので、一層歩きやすくなっています。

「義足ユーザーはヒール靴よりスニーカーを多く履きますよね。」
知識や情報がなくても、自分に必要なものは何かを無意識に分かっているんだなと感じるところです。

 

最後に

冠婚葬祭などヒール靴じゃないといけない場面でお困りの女性がたくさんいらっしゃると思います。
次回たっぷりとお話ししますね。綺麗に歩くために、靴選びはとても重要です。

そして、
・履き口が開くこと
・それがキチンと締まること

この2つも重要です。ヒモやベルトの緩みは靴のピストン運動起こしますが、気にされない方もいらっしゃいます。
脱ぎ履きの多い日本では習慣になりやすく、好都合でもありますよね。

だけど日本人の歩き方は美しいと言われません。欧米人の颯爽とした歩き方はどうでも良いかもしれませんが、彼らは幼い頃から靴ヒモをキチンと結んで歩いてきました。義足ユーザーにとって靴は、まるで靴の上から靴を履いているようなモノ。
ですから、義足と靴に一体感がある程歩きやすくなります。

「一体感があると、軽いと感じませんか?」

靴自体が重くても、軽く感じます。そして軽い物はその内履いていることも忘れてしまいます。義足も同じかもしれませんね。

 

 

about author
toy
・靴職人&グラフィックデザイナー
・下腿義足ユーザー
・パーソナルスタイル診断士(パーソナルカラー診断+骨格診断)
・先天性と後天性の障害を持ち、「義足とバレない人生を送る」をテーマに、実験的人生を楽しんでいる。