義肢装具コラム

カナダの義肢装具士の仕事

カナダの義肢装具士の仕事

カナダの義肢装具士の仕事

はじめまして。義肢装具士の鈴木悠仁子です。

日本で義肢装具士の資格を取得し東京で3年ほど働いた後、カナダへ移住し、トロントにて装具士として勤務していました(現在は日本に帰国中です)。
こちらのコラムでは、それらの経験から得た情報など共有していきたいと思っています。

今日は第一回目として、まず、カナダの義肢装具士がどんな役割を担い、どういった仕事をしているのか、日本との比較をしながら紹介したいと思います。

 

日本との違い
義肢士と装具士に資格が分かれている

ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、北米(アメリカ/カナダ)では、まず資格が義肢士(CP=Certified Prosthetist)と装具士(CO=Certified Orthotist)の2つの資格に分かれています。

養成校では日本と同じように義肢と装具の両方を学びますが、卒業後にどちらの資格を目指すかを決め、それに応じた研修先を選びます。
カナダの場合、養成校卒業後に研修生として約2年弱(3450時間)勤務すると、資格認定試験を受ける権利が与えられます。
この研修や認定試験についてはまた別の回で詳しくご紹介したいと思っていますが、もし日本のように「義肢装具士(CPO=Certified Prosthetist and Orthotist)」になることを目指す場合は、1つ目の資格の取得後、再び2年ほど研修生として働き、試験を受ける必要があります。(以下写真は「現地のイケメン製作技術者(テクニシャン)」)

日本との違い
装具士/義肢士の独自のクリニックを持つ

日本の場合、ほとんどの義肢装具士は民間の製作会社に属したうえで「患者さんに会うために病院に出向き、医師(または理学療法士)の指示の元で型取りや採寸を行ない、型を会社に持ち帰り製作し、病院に持ち込んで納品」という製作スタイルが多いこと(病院勤務の義肢装具士は少数派であること)に対し、カナダの場合、日本より病院勤務の義肢士/装具士が多く、日本と同じように民間の製作会社もたくさんあることが特徴となります。

ただ、それらの会社は全て独自のクリニック(製作所と併設)をもっていて、義肢装具を必要とする全ての患者さん(入院中の方を除き)は、どこかの医師から出た義肢装具の処方箋を手に、それらのクリニックを訪れます。
クリニックには医師や看護師、理学療法士などは勤務しておらず、義肢クリニックなら義肢士、装具クリニックなら装具士と、製作技術者(テクニシャン)、そして受付・事務のスタッフが在勤しています。

クリニックに製作所が併設しているので、もちろん機械や道具、材料なども全てその場に揃っており、調整や修理をその場で行い、すぐ患者さんに装着、動作確認を行ってもらうことができます。(以下写真は「現地クリニックの雰囲気」)

日本との違い③
義肢装具士が
アセスメント(問診や触診)からフォローアップまで行う

カナダも医師からの処方箋がないと義肢装具を作る際に健康保険などが適用されない、というのは日本と同じです(オンタリオ州の場合)。

ただ、納品後の医師による適合チェックや証明書などは必要なく、またほとんどの場合は医師からの処方箋にも大まかな処方(例えば「足の装具」など)しか書かれていないので、患者さんがクリニックを訪れた時点では具体的に何を必要としているのかが分かりません。
そのため、まずじっくりとアセスメント(問診や触診、筋力や神経のテストなど)や歩行分析を行うところから始まり、その後のデザイン決定、型取り、仮合わせ、納品、調整、修理、定期的なフォローアップなど、義肢装具に関わる部分は全て義肢士/装具士が担います。
そこに病院や医師はあまり関与しません。「義肢や装具に関しては、専門家に一任する」というスタンスです。

私が特に素晴らしいと感じたのは、出来上がった製品を患者さんに渡した後、義肢装具士が必ず定期的なフォローアップを行なっている点です。1カ月後、3カ月後、半年後、1年後といった形で帰る前に必ず予約を取ってもらい、予約の日程が近づくと1人1人に確認の電話をし、クリニックに来てもらいます。どれくらいの頻度で来るかは、患者さんの身体の状態や疾患、コンプライアンス(患者さん本人が義肢装具の使用をどれだけ受け入れているか)、治療の状況などに応じて決定しています。こうすることで、製品を作って終わりでなく、正しく使えているか、傷や痛みなど問題は生じていないか、身体の状態に変化はないか、清潔を保てているかなどを確認し、その都度必要な処置をその場で行うことができるので、患者さんも我々も安心です。

日本では、装具を受け取った後のフォローは患者さん任せとなり、壊れたり、痛みなどの問題が発生したり、新たに作り替えをしたい場合などに、患者さん自身が製作所や病院に連絡を取らなければならないケースが多いことから「高齢者の方が介護施設に入所し、本人が気づかず装具の装着方法を間違えたまま使っていたり、装具が体に合っていない状態、または破損した状態などで使用を続けた結果、怪我や骨の変形を引き起こしたり、身体機能を低下させてしまう。」といった問題がよく起きてしまいます。
こういった問題を未然に防ぐためには、その患者さんが退院や施設に入ったりしても義肢装具士が継続的にフォローすることができる、

『誰も取り残されない』仕組み作りが大切だと思います。この点はカナダのシステムをもっと日本でも見習えたら良いのかもしれません。

日本にいるとよく「カナダは日本より医療や社会制度が進んでいるんでしょ」と言われるのですが、正直そうでない部分もたくさんありましたし、でも「確かにこれは良い!」と思うこともありました。

どの国の制度も完璧ではないので、お互いから良いところを学び取って、社会全体として今より少しでもよくしていけたら良いですし、そのために私の経験が何か役にやってくれたら嬉しいです。これからも、少しずつ頭を整理しながら、こちらに投稿させていただきたいと思っています。

 

 


about author
鈴木悠仁子(Suzuki Yuniko)
・義肢装具士
・やってきたこと:バックパッカー旅、ボランティア(装具士としてハイチへ派遣)
・これからやってみたいこと:プラスチックゴミを出さない生活(義肢装具の世界では難題ですが、まずは日常生活から…!)、開発途上国でのPO分野への貢献